GBLのブログ

読書感想文です。

全力を尽くした人がその経験を血肉にできる本「限界の正体」

スプリント種目の世界大会で日本人初のメダル獲得者である為末大さんの著書「限界の正体」の感想を書く。

スポーツ選手としての活躍は広く知られる著者だが、現在はスポーツや教育関連の会社を立ち上げビジネス領域で活躍されている。

日本人には肉体的なハンディャップが大きいとされるスプリント競技。そんななかにおいてメダルを獲得された為末さんの限界の認識はやはり凄まじい。

 

まず初めに、本書は「必死になって限界を拡張する、全力で目標を達成するという経験がない人が読んでも意味がない」ということを言っておく。なぜなら本書を読む価値は限界を感じたことがある人に本当の限界の意味を教えるというところにあり、限界を感じた経験のない人は「ふーん、そうなんだ」で終わってしまうからだ。

 

私は13年間必死に続けた剣道での経験の中に、本書と深く共感できる経験を多く見つけられたがそれでも4分の1程度はあまり共感を感じない内容であった。

共感できた内容については、自分の今後の意思決定に十分影響を与える財産になったと思う。以下私が強く共感した為末さんの主張を1つ紹介する。

 

 

私が個人的に強く共感できた本書の主張

誰かができれば自分にもできる

私が本屋でこの本をぱらっと試し読みしたときに「この本はアタリだ!!」と感じさせられた主張。

まず前提として「限界とは、人間のつくり出した思い込みである」「人は、自分でつくり出した思い込みの檻に、自ら入ってしまっている」という主張がある。

この前提は裏を返せば、限界なんてものはほとんどが主観的なものであり思い込みから脱することができればいとも簡単に突破できてしまうものであるということだ。

そしてこの章では、他人が自分が感じていた限界を突破したのを見るだけで、自分自身も簡単に限界という思い込みを突破できたという事例を紹介している。

 

「1マイル4分の壁」

何十年もの間、人類が1マイルを4分以内に走りきることは不可能だと言われていた。

しかしあるとき、バニスターという選手がこの限界を突破する。すると驚くべきことにその1年以内に新たに23人の選手が次々に4分の壁を突破した。

 

「日本人のメジャーリーグへの挑戦」

以前は国内の野球関係者の間ではメジャーリーグで日本人選手は活躍できないというのが常識的な見解だった。しかし野茂さんがメジャーリーグで活躍したのを皮切りに、この限界は次々に突破される。松井秀樹さんは「野茂さんがいなければ、ほとんどの選手はアメリカに行けなかった」と断言している。

 

「ハードルの授業」

小学生たちに好きな高さのハードルを跳ばせると最初は子どもたちは低いハードルを選ぶ。しかし誰かが高いハードルを跳ぶとそれを見ていた子どもたちはこぞって高いハードルに挑戦するようになり、多くの生徒がいつのまにか中学生が跳ぶ高さをクリアするようになる。

 

 

 

本書の魅力

どうだろうか。上記の主張は意識的にはあまり認知されていない気がするが、実際にこの主張に沿うような経験をしたことがある人は比較的に多いのではないだろうか。例えば私は、剣道の強豪校に入学した友人がまだその強豪校で十分なトレーニングを積んでいないにも関わらず強くなった、今までとても難易度が高いと思っていたTOEIC800点だったが友人が突破したのを聞いて自分も取り組んでみたら意外と簡単に達成できた。などの経験がある。

 

本書では、今まで無意識的に経験から感じていた限界への感覚をしっかりと意識的に自覚することができる。意識的に自覚することでその経験はより汎用的なものとなる。今回の例でいえば、私は次に限界を感じたときに私の感じる限界が突破された例を探すことで自力で限界の檻から抜け出せるかもしれない。

私たちはこの本から為末さんが自身の経験から学んだ数多くの限界への向き合い方を自分の経験則と照らし合わせて学ぶことができる。