GBLのブログ

読書感想文です。

100年時代の人生戦略「LIFE SHIFT」への反論

ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授、アンドリュー・スコット教授による「LIFE SHIFT」の概要、反論を書く。2人とも経済学、心理学の世界的な権威。本書は平均寿命が100年を超えるような時代にどのような人生戦略を持てばいいのか意見している。

 

 

概要

平均寿命は過去200年間に渡り「10年間で2~3年」というほぼ一定のペースで伸び続けており、そのペースは今後も続く可能性が高いという。このペースが持続すれば、現在20歳の人の半数は100歳までは生きる。現在50歳の人であっても半数は92歳までは生きる。この前提に乗っかると、人々の生き方は大きく変わると予想できる。教育、仕事、引退という3ステージ型の人生モデルは崩壊し、マルチステージ化して多くの人たちが型に当てはまらない自由な生き方をするようになる。寿命に長期化とテクノロジーの発展により、技術の陳腐化が早くなるので1つの能力で一生食いつないでいくことはできないし、長い老後を働かずに過ごすのは難しい。会社勤めを経験した後に再び教育を受ける、旅をして自分の人生を見直す期間を設ける、結婚や子育てなどを機に労働時間を減らす、というような自由度の高い人生になる。著者の言葉を借りれば、有形資産と無形資産のバランスを取るような生き方になる。こうした時代に価値が増すのは、変化を厭わずに対応する能力、自由度の高い長い人生において必要な資産を管理する金融リテラシー、自分の市場価値が陳腐化しないような学びの時間だ。

 

反論

反論を書く。まず前提としてこの寿命予想はかなり控えめなもだ。この予想はテクノロジーが指数関数的に進歩していることを度外視して単純な比例関係に当てはめたものである。ぼくはシンギュラリティが2045年に来ると信じているわけでは全くないが、22歳の僕が死ぬまでに身体のロボット化程度は確実に実現すると思うし、たかだか200年の比例関係で寿命を予測するのは無理があるように思う。

仮に寿命予想が当たったとて、社会や人生設計への考察は現在のお金、社会の仕組みを前提に話しすぎている。例えば本書に出てきた「100歳以上生きるこのペルソナの老後にはこれだけお金が必要」といった話は全く無意味だと感じた。もしかしたらベーシックインカムが導入されるかもしれない。もしかしたら人工知能によって人類の仕事は劇的に減るかもしれない。もしかしたらブロックチェーンでお金のありかたが劇的に変わり、富裕層への富の集中が改善されるかもしれない。人生が長期化したらその分格差が拡大するから備えなければ老後は大変なことになるという主張よりも、民主主義で社会は回るのだから自分の市場価値が全働き手の半分以下にならなければまず食いっぱぐれないよという説明のほうがまだ最もらしいかもしれない。

本書の残念なところはテクノロジーの加速する進化をほとんど考慮せず、読者の不安を煽ることだ。